江藤拓前農水相が辞任し、後任として小泉進次郎農水相が就任した。本コラムで、筆者はコメ価格を下げるのは「チョロい」仕事だと書いてきたが、小泉農水相のマスコミの取り上げ方は尋常でない。どこか、小泉シニアこと小泉純一郎氏の「小泉劇場」に似ている雰囲気がある。
実質2年で骨抜きの郵政民営化
自民党の森山裕幹事長と江藤前農水相は、小泉純一郎元首相がやった郵政民営化の際に造反したので、小泉純一郎氏に怨念があり、その息子である小泉進次郎農水相との確執というストーリーも「小泉劇場」の雰囲気作りに一役買っている。
筆者は郵政民営化の詳細な制度設計の担当者だった。そこで、郵政民営化がどうなったのか、振り返っておこう。
そもそも郵政民営化について、筆者らが意図した民営化は実質2年しかもたなかった。民主党政権になって、郵政民営化法は改正され、実質的に再国有化されたと言ってもいい。民営化は、民有民営であるが、民主党政権で株放出に歯止めがかかり、しかも経営のキモである西川善文日本郵政社長が事実上罷免されたのだ。
西川氏は、数十名の腹心を連れて、郵政に来た。郵政ほどの巨大組織であれば、この程度の人員がいないとまともに経営出来ない。その意味で西川氏は真面目に民営化しようとしていた。西川氏以降、形式的に民間人が来たが、どの人も腹心などを連れて来ず、役所からの要請に答えただけのお飾りである。
こうした経緯で、郵政民営化は挫折した。事実上の再国有化なので、その後の郵政が冴えないのは当然だ。魅力がないので、外資にも興味を持たれず、民営化の際の外資規制もあり、ネットでしばしばいわれる外資に売り渡したという事実はない。